五島牛の飼育方法とこだわり|舎飼いと放牧の違い

黒毛和牛

五島牛はどのように育てられているのでしょうか。

舎飼いと放牧の違い、繁殖と肥育の分業体制、そして2024年に始まった新しい生産モデルづくりの取り組みまで解説します。

五島牛は、一頭の子牛が生まれてから食卓に届くまでに、複数の農家や関係機関の手を経て育てられています。

この記事では、五島牛の飼育方法の基本的な仕組みと、近年進められている新しい取り組みについて解説します。

五島牛の飼育の基本:繁殖と肥育の分業

五島牛の生産は、大きく分けて「繁殖」と「肥育」という2つの工程で成り立っています。

繁殖とは、母牛に子牛を産ませて生後8~10か月ごろまで育てる作業のことです。

一方の肥育とは、その後の牛を出荷できる状態まで育て上げる作業を指します。

五島列島内の農家の多くはこの繁殖を担っており、実際に肥育まで手掛ける農家はごくわずかというのが実情です。

肥育の多くはJAごとうが直営する形で行われており、農家とJAが役割を分担しながら五島牛のブランドを支えています。

舎飼いが中心、広がりつつある放牧

舎飼いのメリット

五島牛の飼育は、現在も牛舎の中で飼育する「舎飼い」が主流です。

舎飼いには、天候や外敵の影響を受けにくく、餌の量や栄養バランスを細かく管理できるというメリットがあります。

牛にとって安定した環境を保てることは、安定した肉質を実現するうえでも重要な要素です。

簡易放牧の成功と広がり

一方で、近年は簡易的な放牧の試みも進んでいます。

実験的な取り組みが成功したことをきっかけに、放牧を取り入れる農家も少しずつ増えてきているのが現状です。

放牧は、牛が自然の中でのびのびと過ごせるというメリットがある一方、離島特有の限られた土地の中でどう実現していくかが課題でもあります。

今後、舎飼いと放牧をどう組み合わせていくかは、五島牛の生産にとって重要なテーマの一つと言えるでしょう。

2024年開始「五島牛生産モデル構築」の取り組み

4者連携協定の背景

五島牛は需要に対して生産が追いついていないという課題を抱えています。

市内の繁殖農家は約240戸ある一方、生まれた子牛の約9割は島外へ出荷され、実際に「五島牛」として肥育・出荷される頭数は年間約460頭にとどまっているのが実情です。

こうした状況を受けて、2024年8月には生産基盤を強化するための新しい取り組みがスタートしました。

協定の内容と役割分担

この取り組みは、五島市・JAごとう・東京農工大学・ジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)の4者による連携協定という形で進められています。

協定では、ブランド確立、品質向上、肥育飼料の開発、販路拡大、肥育頭数の増加など、複数の項目にわたって取り組みが進められる予定です。

役割分担としては、JAごとうとJIAが経営モデルづくりや販路拡大のノウハウを生かして肥育事業の強化を担い、東京農工大学は飼料の選択や肉質の分析を通じて品質向上に取り組みます。

さらに4者が協働して、環境に配慮した経営モデルを繁殖農家に提案し、新たな肥育農家の育成を目指すとされています。

これは、これまで「繁殖は農家、肥育はJA」という分業体制が中心だった五島牛の生産を、繁殖から肥育までを一貫して行える経営モデルへと発展させようという試みであり、今後の五島牛の生産量や品質にも影響を与える可能性がある注目の取り組みです。

飼育方法が肉質に与える影響

飼育方法は、牛の運動量やストレスの度合いを左右するため、最終的な肉質にも影響を与えると考えられています。

舎飼いでは餌の管理を徹底しやすい一方、運動量は限られます。

放牧では牛がのびのびと過ごせる反面、天候や土地条件に左右されやすいという特徴があります。

五島牛が現在、この両方の飼育スタイルを併用しながら発展させようとしているのは、それぞれの長所を生かしつつ、離島という環境に合った最適な飼育方法を模索している証とも言えるでしょう。

今後、東京農工大学による飼料選択や肉質分析の知見が加わることで、より科学的根拠に基づいた飼育方法の確立が期待されています。

まとめ

五島牛は、繁殖と肥育という分業体制のもと、現在も舎飼いを中心としながら、放牧の取り組みも徐々に広がっています。

そして2024年には、五島市・JAごとう・東京農工大学・JIAの4者連携により、繁殖から肥育までを一貫して担う新しい生産モデルづくりが始まりました。

こうした飼育方法の工夫と新たな挑戦の積み重ねが、これからの五島牛の品質と生産量を支えていくことになりそうです。